おさかな

あたまわるめの感想文

映画感想「名探偵登場」

封鎖された雷雨の洋館が舞台のコメディ。

謎の富豪トゥエインに招かれた五人の名探偵たち。トゥエインは探偵たちに「今夜この中の誰かが殺される」と告げて屋敷を封鎖。謎を解いたら100万ドル。トゥエインは何者なのか、100万ドルを手にするのは誰か、真相やいかに。という感じのおはなし。

 

キャラクター ★★★★★
ストーリー  ★★★★☆ あってないようなもんだけど
全体的に   ★★★★★ 頭おかしい、大好き

オススメ度  ★★☆☆☆ 人には勧めないとおもう

 

以下ネタバレ感想。

 

ピーターセラーズ目当てで観たけどストーリーも含め個人的には大正解でした。登場人物はみんな個性的っていうかけっこう壊れてる。倫理などが。全体的に細かいことを気にしないスタイルがまさにコメディという感じで好き。嫌な人は嫌だと思う。主人トゥエインと名探偵たちのやり取りがとんでもなくてよかった。みんなちがってみんなひどい。殺す気の仕掛けたちを持ち前の洞察力で難なくかわしていく皆さんはけっこう名探偵らしく見え、ただの面白集団じゃなくてよかった。ただその傲った感じが最後叩かれるわけだが。

殺人の動機を探るとこで結局全員動機あるじゃんってなる定番の流れ、各々の理由がトンデモな感じでよかった。ていうか探偵たちの素性から最後の謎解きに至るまで、一人が衝撃的な発言をするたびにほかの四人が次々と上乗せしまくるので一人目の衝撃がかすむというか、どんどんわけわからなくなっていってよかった。この人たち頭おかしい。どんでん返しって言うんだろうか?なんか違う気がする。こっちの方がひどい。こんなん制作した人間ぜったい頭おかしいと思った。好きです。

盲目の執事とろう者のコックが意思疎通できなかったり、東洋人をバカにしたり、ゲイに差別的だったりとギャグはけっこう黒めかもしれない。一部は謎解きに絡んだりしたのでよかったのか。あと随所にボヨヨ〜ンみたいなSEが使われており、コメディだな!という感じでよかった。

いい意味でバカバカしく振り切れている。真面目なミステリだと思って観たら絶対ダメなやつだ。観たあとはメチャクチャすぎてわけがわからず、なんかすげえもん観ちゃったな!という気持ちになった。

 

 

セラーズが好きなのでほんとよかった。逆に言えば俳優が好きじゃないと苦痛ということがありそうだ。

セラーズが演じるワン刑事は胡散臭めの中国人。日本人の養子をコキ使う。言うことはけっこう冷静でまとも。つよそう。発音が訛ってるのをトゥエインにちょくちょく馬鹿にされており、セラーズの訛りの演技が光っているっぽいことがわかる。実際聞いてもよくわかんないけど。しかし博士の異常な愛情で米英独と演じたと思ったら今度は中国人。恐るべし。

日本人の息子ウィリーはブツクサ言いつつちゃんとついてく。いいやつそう。父親のことはパパ呼びだし寝る前はちゃんとおやすみのキスしてから眠る。ヘビにも勝てるぞ!

ペリエの秘書マルセルが細長くてよかった。車椅子の老婆も意外と壊れててよかった。

また全編通して盲目の執事ベンソンマムがほんとよかった。見えないっていう演技はすごいな〜〜としみじみ。見えないゆえの迷いのない動作でとんでもねえことばっかりやるので笑えるというかむしろ洋館の雰囲気とも相俟ってゾッとさせられる。リタになるとこで一番笑った。

それから探偵の皆さんには元ネタがあり、容姿も似せてるようだ。ミステリー好きなら全員わかるのかな。しかしこの五人全員のパロディに気付けるくらいミステリ読んでて好きっていう人はこの映画観てもあんまり楽しめないんじゃ、、 

五人にそれぞれのBGMが用意されてたのがいいなと思った。ちゃんと各々の国っぽい。

 

あらゆるトリックが謎の仕掛けや機械のせいということでてきとうに片付くのでほんとダメな人はダメだと思う。執事消す必要あった?

最後の謎解きはえらいメチャクチャで、一人がAと言えば他がAに見せかけたBだとかBはもう死んでてCだとかそんな流れがベラベラ続き、ついていけない。ただただ最低っぷりに感動するし笑うしかない。結局誰が何者で誰が死んで生きて殺されたのかすらよくわからないまんま終わる。

トゥエインの言った100万人のミステリ読者からの復讐とかいう台詞には考えさせられる。後出しのメチャクチャなトリックで名探偵の一人勝ちとか読者をコケにしてんじゃねえぞということらしい。いわゆるノックス十戒なんかを守らないような無理なミステリへの皮肉なのかな。あの十戒も別に絶対ではないようだが。こういうメタ的な話を気にしたストーリーは個人的に大好きなのでよかった。

作中の探偵たちは謎が解けずにすごすごと帰ることになったわけだが、作中の謎は謎としてきちんと考えれば答えが出るようにできてるんじゃないかな。これは「名探偵の一人勝ち」でも「後出しのずるいトリック」でもない、「読者をコケにしない」ミステリなのだろうから。解いてないけど

 

名探偵もどきの名前を冠された五人が推理失敗のまんま狐につままれたみたいに帰っていくというのは意地悪でよかった。結局彼らはパチモンで、名探偵のような推理はできないということなのか。ミステリの世界に生まれられなかった探偵たちはコメディリリーフくらいにしかなれないわけだ。やっぱりただの面白集団じゃないか

吹き替えも是非観たいんだが現在は視聴不可能な模様。なんで?