おさかな

あたまわるめの感想文

映画感想「キャビン」

 

小さな山小屋が舞台と思しき、なんとも名状しがたいパニックホラー。 

週末を親戚の山小屋で過ごすことにした大学生五人組。道中怪しい男に警告されたり、古びた山小屋はどこか不気味だったり、湖もあったり。スタンダードに"それっぽい"装置が揃った舞台。若者たちはやがて不気味な地下室を発見し、恐ろしい化物の気配が漂い始める。そんな彼らを無機質なモニタールームで眺める皆さんがいて…という感じのおはなし。

 

キャラクター ★★★★☆
ストーリー  ★★★★☆
全体的に   ★★★★★
オススメ度  ★★★★☆ ホラー映画が好きならぜひ!

 

以下ネタバレ感想。

 

ネットのどっかでバケモノのビジュアルを拝見してオッと思い観ました。シュガープラムちゃんはかわいい。メタネタに次ぐメタネタというか、入り子構造というかまさに箱というか。いやーめっちゃいいですね。久々だもんで語彙がなくってごめんなさい

お決まりオブお決まりの超スタンダードホラーと思いきやそれは外側から操られており、外側の彼らもまた上位の存在に踊らされる傀儡にすぎないという。神様はつえーな。全体的にホラー映画を皮肉ってるのね。舞台装置に死ぬ順番、あとお色気シーンが必須。そうじゃなきゃこの世界は終わって、別のものたちが蔓延りだす(曰く"変化"とか"他の種に道を譲る")というのは古典的山小屋ホラー?ももう終わりよねという意味なのかな?

 

まあそのへんはいいよね。これを観た方ならまず語りたいのはこんなんじゃなくて後半の最高パニックシーンだというのはわかって頂けるはずだ。

さあパーティの始まりよ!というのは序盤のシッターソンへの意趣返しか。エレベーターの小気味よい音から始まるこの規格外すぎる惨劇は筆舌に尽くしがたいものがある。赤い洪水が止まらない。シャイニングかな?しかも全員苦痛を味わわせながら殺すタイプのバケモノときてるからタチが悪いよな。あらゆるモニターの中で想像するだに恐ろしい悪魔的な仕方で虐殺されていく皆さん、さっきまで音楽の中でうまいテキーラを飲んでいた。停電前のモニターの中でスケッチブックに文字書いてるのはインターンの彼かな。ひとつひとつのモニターを眺めると本当に本当に気持ち悪くなってくるね。ゾンビみたいなやつに口から直で緑のゲロ飲まされてるやつ音声が鮮明で本当にキツいんだよな。あと顔が逆さの天井を這ってるゾンビかなんかの動きが普通にこわい。ホラー得意なわけではないので…

好きなおばけはやっぱりシュガープラムの精。あれのデザインに惹かれて観たと言っても過言じゃない。あとヘルレイザーだか頭に回転のこぎりの刃が刺さったハンサムな彼もいいですね。ヤバい木も良いし機械の電ノコサソリも良いね。元ネタの映画はほとんど知らないんだけどね。観たことあるのシャイニングくらいだ

しかしこれほど超最低限ホラーとして13日の金曜日を履修しててよかったと思った日はないですね。とにかく山小屋で色気づいた若者たちをやっつけてくれるおばけがいるのは知ってました。本当によかった

無機質なエレベーターの音ほんとうに良い。タワーオブテラーかな?良いですね。やっぱり最初に二人のいるエレベーターに行ったのがあんな軽装備警備員が一体だけだったのがいけなかったんだと思います。人員の割き方には気を付けよう!あと麻薬の成分にも気を付けよう!また化学班のミスやんけ

一体一体送り込むとなんとか退治されちゃうおばけの皆さんだけど数の暴力で暴力オブ暴力オブ暴力でいいですね~~~~~~~~こんだけ殺されてんのにシチュエーションが整ってないと問答無用で起きて暴れちゃうのか。やっぱ最後に直で来たのがババアだったからダメなんじゃないかな。(?)

各国でやっているけど、みんな古典ホラーなのかな。日本支部も学校に白装束のおばけだったし。海外ホラーに詳しかったらそのへんもわかるのかな?キングコングみたいなやつとかいたな?

超どうでもいいけど女の生首ふつうにナイスキャッチするの面白くて笑っちゃう

ところで電気系統がうまくいってないくだりはヤク中の彼がエレベーターをアレコレしてるっていう布石だったのかな。しばらく気付かんかったけど

 

ところでハドリーとシッターソンは良いですね。若者よりおばけより何よりあの二人が好き。あの死んだ目!世間話に花を咲かせながら向かう仕事は神々のための人殺し!良いですね。特にハドリーのあのちょっとした合間に見せる暗い顔よ。あと半魚人ネタでバカにされると目がマジになるのほんと笑う。お前を殺しに来るおばけだよ。賭けの時とかハドリーのふとした瞬間の冷たそうさいいですね。この二人が管制室を取り仕切ってて、わりと長いんだろうな。親友らしいし巨匠みたいだし

森でキャッキャウフフして人生が楽しい若者をいやーノルマクリアだなって死んだ目で眺めるおじさん二人本当に良い。本当によくない?生と死の対比かよ。みんな神々の傀儡なんだよなあ

おばけの激ヤバさも好きだけど二人の描写も好きだ。これはこれで後半への布石なんだろう。世間話から始める簡単なお仕事のご様子、それを眺める新人くんの沈痛めいた面持ち。パーティーと呼んでみたり賭けを募ったりして場をせっせと盛り上げるが、モニターを見るその目はけっこうマジだし楽しそうな若者をまるで憐れむような暗い表情で見上げていたりする。なるほど彼らも好きでやってるわけじゃない。館長なる人物がいて、上に何か大きな存在がいることが匂わされている。冒頭のなにかとかシッターソンのコインやら死亡時の祈りなんかで生贄の儀式っていうのはわかる?そうでもない?よくわからない。何かやまれぬ大きな事情があるということはわかる。暗い気持ちをうまいテキーラで紛らわして率先して場を盛り上げるところはさすが管制室担当という感じで良い。

ビッチが死んで喜んだり、あの子を応援したくなってみたり、疲れている。本当にあのへんの表情が好きなんだよな。多分こんな仕事深く考えないようにしなきゃできないんだろう。人間やめたみたいな仕事を人間が人間の心を押しとどめながらやってんだろうな。モニターの中で苦しむ若者なんか見てると人間に戻りそうになるからうまいテキーラでちょくちょく紛らわしてやっていくのだな。冒頭でも酒の話してたしアル中になっててもおかしくない なくない?

あんな勝ち目のないバケモノに機関銃ぶっぱなしてる暇があったら生きたまま内臓裂かれてる新人君を殺して差し上げろ。そんなことしてっから大好きな半魚人に食われるんだよなあ

若者を殺す仕事してるハドリーが子供ほしがってるの本当に皮肉でいい。子供が産まれたら父親の職業なんて教えるんだろうね

モーデカイのくだり本当に好き お前ら全員死ぬからな

犠牲者が半魚人に殺されたら楽しいハドリー自身が半魚人に殺されるの普通に最高だし最後の一人が他でもない人間に殺されるってのもいい話だなあ

 

ところで吹き替えの話をしますが私は大塚芳忠氏が好きなのでキャビンは吹き替えが好きです。ほんとに声が美しい。原語版でもわりと声質が似ているしシッターソンは適役だったなーと思う。マーティの声は微妙だけど

それはそれとしてハドリーの吹き替え!内田直哉氏。今まで知らない人だったのだけど。まさに洋画の吹き替えって感じのハキハキした明朗なお声だ。ハドリーの吹き替えで一番好きなのは彼の断末魔、本当に本当に嫌そうな悔しそうなあの絞り出すような「半魚人か!」。原語版より好き。あれほんと最高じゃない?天才?吹き替えてくれて本当にありがとう。それしか言葉が見つからない。